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by 鈴木二郎 野草社「もうひとつの日本地図 〜自然生活編1999-2000〜」より |
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農薬をまく時期になると、学校で全校生徒に注意があった。茶畑に赤い旗が立ててある所は、農薬がまいてあるので近寄らないようにと。強い毒性があるので辺りは立ち入り禁止区域になった。人間には毒だが、茶の葉には虫がつかなくなり品質が良くなるのだということだった。頭から足先まで全身を防備し、白い粉にまみれながら農薬散布している人と、漂っていた悪臭は脳裏に焼き付いている。 学校を卒業すると、今度は自分がマスクをして農薬散布しなければならなくなった。農協の指導にしたがって、この程度の濃度ならいい、この使い方をすれば安全であると思い込み、カッパで全身を包みマスクで顔を覆って農薬をまき続けてきたのである。 お茶の効用として発ガン抑制、動脈硬化や脳卒中予防、その他虫歯の予防から美容、血圧降下の作用があると云われている。だがその一方で気になり始めていたことがあった。相当な量の農薬や化学肥料を使っているのに、それでも身体に本当にいいのだろうかという疑問が出てきたのである。その疑問は体験から生じたものであった。
最初は二人とも、年のせいか、体調が悪かったのだろうと思っていた。ある夏の日に、農薬散布中に家内がついに倒れてしまった。それまでの疲れか、その日の暑さが原因かもしれない。この出来事はショックだった。 丁度その頃、無農薬でみかんやお茶を作っている人を訪ねた。まだ無農薬栽培という言葉が一般的でなかった頃である。中途半端な気持ちのままではいけないと思い、その年から全園を無農薬茶にすることにした。長年農薬と化学肥料で栽培してきたお茶である。恐る恐る本当にこれでいいのだろうかという思いの中での切り替えだった。 いろんな有機農法資材を使っていくうちに、要点は二つあることに気がついた。まず生物の生理を知ること。もう一つは気象状況が判断できるようになることであった。 土壌中の生物すなわち微生物を育てることと葉の細胞組織を本来の強さにすることに重点を置いた。肥料は植物の栄養ではなく、土中にいる様々な生物のエサとして与えることがポイントとなった。 この方法は、栽培の原点であり、簡単で単純明快な農法である。その農法 農薬や化学肥料による栽培は緑濃いお茶の葉を茂らせ、一見すれば見栄えがいい。しかし細胞組織を弱らせ、病気や他の自然現象に対する抵抗力を失わせてしまう。これは、お茶の葉の生命力、吸収したエネルギーが、農薬から化学肥料によって損なわれていくからである。 農薬をやめてから以前のような疲れは感じなくなった。人間も農薬に細胞組織の活性を殺されてしまい勢いがなくなるのは植物と同じだと思う。 農薬と化学肥料に頼らない自然の理にかなったお茶の栽培により、飲んだお茶が身体になじむ、身体の中に入っても自然な感じがすると好評である。 |